よしおかノート

人生とは、壮大かつ複雑な実験である

【書評】前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』

 
 
ただの新書だと思ったら大間違い。笑って笑って、うっかり感動させられたりする。前野先生はものすんごい人だと思う。
 
 
 
・すごいところその1
全てをかけてアフリカに単身突撃する行動力と腹のすわり具合。地雷を踏みかけてもサソリに刺されても屈しない。
 
 
 
・すごいところその2
研究者にありがちな(という偏見かもしれないが)「研究できればそれでいい」という考えのもと、盲目的にやりたいことをやるのではなく。かといって、ある程度安定してお金をもらえればいいと妥協するでもなく。夢である「昆虫博士」になる為に工夫も苦労も重ねて、型にはまらず、それでいて非常に現実的な解決策を模索しているところがすごい。頭もいいんだろうなと思う。
 
 
 
・すごいところその3
学者なのに溢れるユーモア。ブログを書いたり、ニコニコ超会議に出演したり、面接に白眉で臨んだり。でもそれらすべてが計算の上なのだ。自分を滅し、目的の為にはひたすらにまっすぐなのである。そういうところに驚きもし、勇気ももらう。
 
 
 
 最後に、前野先生がババ所長から「ウルド」(Ould モーリタニア語で「〇〇の子孫」という意味を持ち、最高に敬意を払われるミドルネーム)を授けられたシーンが感動的なので。
「(前略)誰か一人くらい人生を捧げて本気で研究しなければ、バッタ問題はいつまで経っても解決されないと思います。私はその一人になるつもりです。」
 
 
研究しなければ、論文を出さなければ食っていけない。だから、論文にしやすそうな研究をする(時には、結果ありきの研究をしたり)。日本の博士たちの過酷な状況では、不本意でもそうならざるを得ないのだろうが、「いや、それでも!」と前野先生は行動するのだ。
 
何のために研究するのか。何のために働くのか。世界には解決すべき問題がたくさんあるのに、見て見ぬ振りをしてどうでもいい仕事をするのか。すべての社会人に問いかける本書。身に沁みました。
 
 
 

 

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)