よしおかノート

人生とは、壮大かつ複雑な実験である

素晴らしい最期だった 〜直虎第33回「嫌われ政次の一生」レビュー

 

先日、大河ドラマ「女城主 直虎」が一つの山場を迎えた。以下、盛大なネタバレとなるので、未視聴の方はブラウザバックをお願いします。もし内容が気になるようであれば、ぜひ1話から観ることをお勧めします。今までの話は、この33話のためにあったのだと思う。

 

 

 

 

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第33話「嫌われ政次の一生」

 

まず、副題からして秀逸である。始まったばかりの頃は「ふざけてるのか」とさえ感じたこの副題パロシリーズだったが、はたしてこの回の為のものだったのか。

 

最初から最後まで引き込まれたが、特に後半15分は、只々泣き続けるしかなかった。ドラマや映画でこんなに声をあげて泣いたのはおそらく初めてだ。大泉洋主演の映画『青天の霹靂』で、柴咲コウ(偶然にも)演じる母親と大泉洋演じる息子の対話のシーンでもかなり泣いたが、それ以上だ。

 

存在を大切に想うが故に、その死を最大限利用するという結論の、潔さ。まさかの、自らの手でとどめを刺す直虎。そんな直虎の決断に、満足気に逝く政次。展開としてはかなり特異であるにも関わらず、それまでに丁寧に描かれていた二人のそれぞれの思いや関係性ゆえに、全く破綻がない。完璧だ。完璧な、そして深く、美しい最期だった。

政次を演じる高橋一生がとにかく素晴らしい。牢で、龍雲丸に向かって「本懐だ」と告げた時の、迷いのない表情。そして最期のあの笑み。おとわへの愛情や、信頼、敬意、一言ではとても言い表せない感情が溢れていた。

直虎と政次が最期の瞬間まで浴びせあった罵声は、すべて裏返しだ。本心を言葉の裏に隠し、本人達にしか分からない最期の言葉を交わし合う。ある意味、ものすごくロマンチックで、そしてやはり切ない。

 

本当に、映画を一本見たような内容の重さだった。大河ドラマ史上に残る名場面を視聴できた幸せをかみしめながら、しばらくは政次ロスに陥りそうである。